私の好きな呪いのビデオ

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今週末に最新作(109)が公開される、『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズ。まさに心霊ドキュメンタリーの金字塔、このシリーズは、私に心霊映像の秘める可能性というものを思い知らさせてくれた。ホラーブーム真っ只中、ぜひ皆さんに
も見てもらいたいので、オススメ”呪いのビデオ”を紹介させていただきたい。

『仏壇の遺影の顔が...』(シリーズ3より)

心霊映像と聞いて、一体どんなものを思い浮かべるだろうか。祖父母の家で遊ぶ男の子を撮影したこのカメラは、誰もが予想だにしない、奇妙な現象を捉えている。そして、その奇妙さは愉快でもあり、感動的でもあるのだ。私はこの映像を見
て”ほん呪”、ひいては心霊ビデオに入れ込むようになったといっても過言ではない。何度見ても素晴らしい。自分が思いつきたかったと、ただ嫉妬するばかりだ。
      

『4人いる』(シリーズ3より)

またしてもシリーズ3から。傑作である3を、先ほどの『仏壇~』と共に象徴しているのがこの『4人いる』だ。河川敷でキャンプを楽しむ若者4人組。そのうちの1人がカメラを持っている。当然、映像に映るのは撮影者を除いた3人だけの筈だが、このカメラは4人全員を捉えてしまうのだ。超クール、ほんとにあったカックイのビデオ。実際に見てもらえれば、なるほどカッコイイ映像だと分かってもらえるはずだ。
      

『ニューロシス』(シリーズ15より)

これも、いわゆる心霊ビデオとは違ったおもむきのある一本。ある廃墟を訪れた若い女性2人組が体験する恐怖。心霊ビデオというのは基本的に、ちょっと分かりづらい。ん?なんか顔っぽいのあったよね?ん?いま何かいたよね。人影みた
いな......といったように、こちらから歩み寄る姿勢が必要となる場合が多い。しかし、『ニューロシス』にそんな姿勢は必要ない。”分かりやすさ”と、”ワケの分からなさ”の交じり合った大混乱。半べそかくこと間違いなしだ。

『面接』(シリーズ28より)

アダルトビデオの面接の様子を撮影したビデオ。その女性は、面接官であるプロデューサーに「田島さんいますか」と尋ねる。戸惑うばかりのプロデューサーに対し、女性はどんどんヒートアップ。「田島を出せ」「田島はどこだ」と半狂乱になる
彼女をプロデューサーが室外へ連れ出し、部屋に残されたカメラが、誰もいなくなった室内を映し続けるが......。これは怖い。なるほど、そんなところからも出てこられるのか、という感心もある。しかし怖い。この原稿を書くために見直したが、嫌
な気分になった。
      

『肝試し』(シリーズ35より)

あまりに直球なタイトルだが、怪異は少々変則的。『呪いのビデオ』シリーズでは、何かの隙間から顔をのぞかせているアナログ幽霊はもちろんの事、機器に干渉してくるデジタル幽霊も存在している。幽霊が、カメラそのものに異変を起こしてく
るのだ。その典型がこの『肝試し』。私は初めて見たとき、思わず大声を出した。しかし、これを見て大声を出さない人間
は、一体どんなときに大声を出すというのだろう。キムタクを見たときとか?
      

『呪いの藁人形』(シリーズ37より)

夜の森で、丑の刻参りを目撃してしまった若者の撮影したビデオ。どこかの隙間からチラリと顔を出す程度なら許してやらんでもないが、追いかけてこられちゃたまらない。自分を撮影者の立場に置き換えることがあまりに容易ゆえ、このビデオ
ははてしなく怖く、そして多くの人に愛されている。
      

『溶解』(シリーズ51より)

幽霊と一夜を共にしてしまった男。翌朝、携帯電話には、ある動画が残されていた......。確かそんな話だった筈。これに関しては怖すぎて見返すことができないので記憶だけで書いている。テレビでも紹介されたことがあるらしいが、こんなも
                

 

 

 

 

の地上波に映しちゃダメだろう。仕事で疲れて帰ってきて、テレビつけてコレが流れてたら、そのまま小便を漏らしてしまうだろう。
      

『声』(シリーズ66より)

仲間との悪ノリで、アパートのベランダ越しに、隣室を覗こうと自撮り棒を伸ばす投稿者。すると、そこには衝撃的な光景が広がっていた......。これも素晴らしく怖い一本。シリーズにおいて自撮り棒が初めて登場したビデオであると記憶しているが、この使い方はしびれる。撮影者は、ファインダーを覗いていないのである。ベランダからベランダに伸ばされたカメラ
だけが、その異様な光景を目の当たりにしている。腕を伸ばしている撮影者はそんなことを知る由もないまま、無邪気に
カメラの冒険を手伝っている。ここに何とも言えぬ怖さがある。本作と同じ構造(リアルタイムでファインダーを覗くことので
きない人間が、カメラをひとりでに冒険させる)を持ったビデオは他にもいくつかあり、中でも『消波ブロック』(シリーズ103より)は屈指の怖さを誇っている。

『灯台』(シリーズ68より)

灯台の様子を映したライブカメラ。そこに何やらおかしなものが映っていた。非常に地味で、シリーズを鑑賞している人でも覚えてないかもしれないようなビデオなのだが、私はこれが大好きだ。どこか幻想的というか、叙情的というか......。絶対に言葉を間違っているのだけど、ロマンチックなのだ。呪いのビデオは怖いものばかりだとお思いだろう。ロマンチック
なものも数多く眠っているのだ。
      

『花火の上』(シリーズ73より)

シリーズ・マイ・ベスト。まず花火を上から捉えたドローン撮影が素晴らしい。夏の星座にはぶら下がれなくとも、上から花火を見下ろすことはできてしまう時代。遠くにあるのを見上げるしかできなかった花火の新鮮な角度に目を奪われている
と、信じられない現象が起こる。何が起きるか、試しに予想してみてほしい。予想できましたか?はい、それじゃありませ
ん。このアイデアも、私が思いつきたかったと、悔しいばかりだ。ぜひとも見てほしい傑作である。ちなみに、後に続く『復
元』もスゴイ傑作。73はすごいぞ。

『散乱』(シリーズ80より)

恐怖と笑いは紙一重とはよく言ったものだが、この『散乱』は”笑い”寄り。私はこれを見た際に大声を出したが、それは悲鳴ではなく、笑い声であった。友人に見せたところ、友人も爆笑していた。私は、笑いというものは不思議だと思った。どう
して私は、この笑わせようとしているわけではない(いや、笑わせようとしている可能性も大いにあるだろう)映像を面白い
と感じ、さらに、その感性を他人と共有できるのだろうか......。『ほん呪』は、思考をあらゆる場所へと引っ張っていってくれる。
      

また、『Special』や『X』など、正規ナンバリングではないシリーズにも傑作はたくさんある。『無名の投稿』(Special 4より)は怖さとカッコよさを兼ね備えた傑作だ。同じくSpecial 4の『謎の女』も超怖い。何より『The Movie 2』。今をときめく白石晃士が監督を務めている劇場版で、これも他の追随を許さぬ出来だ。映像に入り込んだ幽霊の声が何と言っているよう
に聞こえるか、渋谷へ街頭インタビューに行ってしまう展開には驚いた。20年前の渋谷の街並みも垣間見え、非常に見応えのあるものになっている。『ほん呪』シリーズは、その洗練された怖さもさることながら、時代ごとの街並みやファッショ
ンを楽しめるという側面も魅力のひとつだ。みな平成が好きでしょう。リアルな平成を楽しむなら、『ほん呪』シリーズが最
適なのである。
      

他にもオススメしたいビデオはたくさんあるのだが、あまりにキリがないのでこの辺りにしておこう。11月8日から劇場公開される『109』に間に合うよう、今から過去作をすべて鑑賞して、上映に駆けつけてほしい。

 

ライター:城戸(https://twitter.com/sh_s_sh_ma)