·
東京芸術学校、今の芸大を中退して、奄美に移った画家がいる。
そんなフレーズだけ聞くとだいぶ破天荒な画家に思える。
その画家こそ田中一村である。
ただし、その生涯は苦悩に満ちている。
栃木、千葉、奄美という変遷とともに、漁師をしながら画家をする。
家族を養いながら絵を描くという、まさにクリエイターの鏡のような存在である。
しかし、生前それは評価を受けることが難しかった。
それが没後、NHKの『日曜美術館』などで取り上げられ、再評価をされて現在の評価に至る。
アンリ・ルソーの影響もみられるというが、その繊細なタッチは写真ではよくわからないが、
実物は紛れもない日本画の伝統的なタッチなのである。
また奄美に移ってからの絵はそれまでの作風と違って非常に軽快で明るい。
それまでも多いしげった森などは好きな様子だし、構図も大胆だ。
しかし、奄美以前の作品には重々しさや苦悩が随所に伺える。
一方で、奄美時代の作品は綺麗な南国の鳥やフルーツ、椰子の木が描かれる。
魂の静寂、救済あるいは解放とはこういうものなのだろうか?
と考えさせられる。
これはゴヤの最晩年の作品に近いような清々しさに似たものがある。
ぜひみにいって欲しい