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どうして、“怖い”という感情が生まれるのだろうか? 筆者も人並みに怖いと思う瞬間はある。たとえば車の運転。免許は持っているけどペーパードライバーなので、久しぶりに運転するときは怖い。あとは人。誰しもあると思うが、なんでか「苦手だな、怖いな」と感じるタイプの人がいる。そして幽霊。筆者はゾンビやスリラー作品は見ることができるのに、ホラーは苦手だ。
これらに共通しているのは、“知らない”ことなのではないかと思っている。運転をしたときに起こるアクシデントと、その対応方法を知らないから、怖い。理解できない部分が多くて、思考回路がわからず、怒りの沸点が読めなくて怖い。そして幽霊は、得体が知れないから、怖い。
というわけで、購入してみたのが『イラストで見るゴーストの歴史』だ。
本書は全編フルカラーのイラスト付きで、正直見出しとイラストを眺めているだけでも面白い。イラストのタッチもかわいらしいので、忠実に再現するとかなり怖いであろう幽霊の説明も、かなりポップに学ぶことができる。ありがたい。
たとえば、「ブラッディ・マリー」という幽霊を解説しているページがある。これはアメリカの都市伝説的な幽霊の話なのだが、ろうそくをつけて鏡に向かって「ブラッディ・マリー」と繰り返し唱えると、血まみれの女性の幽霊が出てくる、というものだ。実写だとどう考えても怖すぎる話なので、本当にポップなイラストにしてくれて助かった。
このように本書は、「これ実写で見たらヤバそう」といった事例がいくつも記載されている。もしホラー耐性があるというなら、本当はどんな画なのか調べてみるのもいいだろう。そういった意味では、ホラー耐性がない人でもある人でも楽しめる内容になっている。
本書は、時系列順で幽霊の歴史を解説している。古代神話に始まり、浮世絵の題材として幽霊は人気があったという19世紀。「幽霊なんていねーよ!」という人たちがどのように心霊を暴こうとしたのか解説されている20世紀、テレビ番組やゲームに幽霊がどのように影響していったのかを紹介する21世紀。あらゆる角度から私たちの世界に、幽霊がどう出没してきたのかが描かれている。
途中、実際に言い伝えられている心霊スポットや建造物なども紹介されているのだが、こういったところでも、イラストが豊富に使われているのがありがたい。文章でカリフォルニアにある『キャリコ・ゴースト・タウン』が……とか、台湾の三芝区にある『UFOハウス』が……と言われてもすぐには想像しづらいが、イラストがあるとその風景や、何がどう怖いのかがすごく頭に入ってくる。そもそも本を読むのが苦手だという人にもおすすめできる一冊だ。
結局、当初の目的である“知れば怖くなくなる”のではという目的は、残念ながら達成はできなかった。読了後でも普通に幽霊は怖い。だが、はるか昔からみんな幽霊という存在に振り回されてきたことは伝わってきたので、その事実は少し滑稽でクスッと笑える。そして、きっとこれからも私たちは幽霊という存在に振り回され、魅了されるのだろう。
ちなみに筆者は映画『ゴーストバスターズ』が大好きなので、そういった意味では幽霊という存在に感謝したい。ワクワクするコンテンツを届けてくれてありがとう。
ライター:はるまきもえ