
あーだめだ、なんもやる気起きない。っていうとき、“やる気スイッチ”を入れるための方法は、人それぞれあると思う。
やる気スイッチは、音楽だったり、漫画の名シーンの切り抜きだったり、書籍の名言だったり、好きなドラマのひと言だったり。筆者も集中しなくちゃいけないときは、よく自分を誰かに重ね合わせて仕事をしている。
今回紹介するのは、そんな筆者のやる気スイッチのひとつでもあるYouTube動画だ。チャンネル名は「はらPecoスイーツ」。このチャンネルでは、スイーツ店を中心とした密着動画を投稿している。
そのなかでも、私が繰り返し視聴しているのは、富山県にあるケーキ屋『antCAKEANDBAKESTAND』の密着動画だ。
オーナーパティシエの山岸さんが、黙々と商品を作っている様子が写っている。お店で働いているのは山岸さんのみ。ケーキ作りから接客まで、ひとりでこなしている。山岸さんがお店に到着すると、まずは大量のスポンジ作りからスタートする。
本当に黙々と。「苺のショートケーキ」「生チョコショート」「抹茶のショート」「ショコラロール」「タルト」……など、いくつもの種類の商品を淡々と作っていく。ときどきカメラマンに声をかけるシーンもあるが、基本的には話すこともなく、ひたすら作っていく。ひとつの無駄もない、洗練された動きだ。
とくに目が離せないのが、デコレーションの仕上げのシーン。チョコレートのコーティングやクリームの絞り方は本当に芸術的だ。果物やクリームがたっぷりとのった商品は、どれも本当に美味しそうだし、山岸さんのセンスを感じる。
一見、誰にも邪魔されずにすべてを自分の思いのままに作ることができて、楽しそうな仕事にも思える。でも言い換えれば、すべての責任は自分にあるということでもある。
作業は楽しそうなデコレーション作業だけではない。食品を取り扱うということは衛生面もかなり気を配っているだろうし、それ以外にも材料の仕入れ、利益の算出、SNS運用などなど華やかな仕事だけではないはずだ。自分だけのお店を持つというのは、そういういろんな物事を全部ひっくるめて“お店を持つ”ということなのだろう。誰にでもできることではなく、辛いことや大変なこともたくさんあるだろうが、きっとその世界にしかない幸せややりがいもあるはずだ。
ケーキ屋ということもあって、映像は視覚的にも楽しいものとなっているが、その裏にある仕事への向き合い方に、筆者はいつも心を打たれている。世界はまったく違うが、「もう少しできるだろう」「もう少し突き詰めることができるだろう」と背中を押されている気がした。
ライター:はるまきもえ