マーゴット・ロビーのLINEについて

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地元のレンタルショップに、『WATCH [ウォッチ]』という映画があった。2009年、オーストラリア製作のスリラーで、配給はファインフィルムズ。いかにも低予算スリラーという出で立ちで、ということは俺が見る映画だ、とほとんど自動的にレンタルしたのを覚えている。確か2011年か12年ごろであろう。ティーンエイジャー3人組がビデオカメラを使い向かいの高層マンションの住人たちを覗き見していると犯罪の現場を目撃してしまうという、青春版『裏窓』といったあらすじだ。ちなみに、同じく『裏窓』との類似が指摘されていた(どころか訴訟まで起こされた!)、D・J・カルーソー『ディスタービア』が2007年に公開されていたりもする。『裏窓』はもちろん、こちらからの影響も受けているのかもしれない。



肝心の『WATCH [ウォッチ]』の内容はというと、これがてんで覚えていない。記憶しているのは、面白くなかったということだけだ。刺激と高揚を求めていた15歳の青年を満足させる出来ではなかったのだろう。いま見るとまた違うかもしれないが、最寄りのTSUTAYAには置かれていない。今度、宅配レンタルで取り寄せてみるとしよう(記事を書く前に見ておくべきだ。申し訳ありません)。



さあ、マーゴット・ロビーの話である。なんと本作には、まだオーストラリアで活動していた当時18歳の彼女が出演しているのである。犯罪を目撃してしまう3人組のうちの1人を演じており、メインキャストだ。彼女のファンにとっては、それだけで見る価値のある作品と言えるだろう。今ではブロンドのイメージが強い彼女だが、本作では黒髪だ。本作の監督アーシュ・アーロン自身がアップロードしているトレイラーでその姿を見ることができる。





ちなみに、マーゴット・ロビーの映画初出演作は、同じくアーシュ・アーロン監督による『ダークネス・ビギンズ』という犯罪映画(こちらは未見)だ。縁があったのだろう。こちらもきちんと鑑賞しなければ。




さて、この『WATCH [ウォッチ]』を見て、そう時間も経たぬうちに、あるニュースが目に入った。それは、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のメインキャストに、あるオーストラリア人俳優が抜擢されたというものだ。マーゴット・ロビーという名のその女性は、母国での活動が主であり、ハリウッド映画に出演するのは初めての、世界的にはほとんど無名の存在であった。私は、その女性が、あの『WATCH [ウォッチ]』に出演していた俳優だと気付くのに時間はかからなかった。根っからのミーハーである私は、無名の役者が超大作に大抜擢、みたいな話が大好きだからだ。ニュースを見てすぐに、ネットで名前を検索をしたに違いない。よく覚えていないのだが。



こういった経緯があり、そこから俳優として大躍進を遂げていく(それは類を見ないほど勢い強いものであった!)彼女の姿を見るたびに、「俺はマーゴット・ロビーのことをウルフ・オブ・ウォールストリートに出る前から知っていた」という優越感を多分に含んだ思い入れを抱いてきたわけだ。あまりにもくだらないミーハー精神だと自覚しているが、私はこうできている人間なのだから仕方がない。



みんなよりちょっと前からマーゴット・ロビーを知っている。という自信を胸に抱え、東京で揚々と生きていた2019年に、『拷問男』という映画を見た。劇場未公開作ながら、日本でもそれなりに知名度のある作品だ。オーストラリアを拠点に複数のスプラッター映画を制作しているクリス・サン監督(イノシシホラー『Boar』がGEO限定でレンタルされていたのを覚えている。『チャーリー:ザ・モンスター』はAmazonプライムビデオにて配信されたが、モザイクの多さに肩を落とした)による、まさにタイトル通りの拷問映画である。私は、「趣味が悪いなあ」と顔を歪ませながら見ている最中、なぜだかマーゴット・ロビーのことが頭に浮かんでいた。どうして?拷問(しかも肛門に有刺鉄線を入れるというような凄惨極まりないものだ)と彼女には何の関係もないはずだ。確かにこの『拷問男』は、彼女の出身国であるオーストラリアの映画だが……



拷問を受けている男性の顔を見てはっとした。この人、『WATCH [ウォッチ]』に出ていた俳優じゃないか!私がマーゴット・ロビーのことを思い出すのも当然だ。主役の3人組のうちの1人として、彼女と共演していたのだから!



彼は名をクリスチャン・ラドフォードと言い、主にオーストラリアで活動している俳優だ。それゆえあまり情報が無いのだが、ネットで調べた限りだと、彼はマーゴット・ロビーの幼馴染であるという。『WATCH [ウォッチ]』のオーディションを受けるよう勧めたのも彼であるというのだ。ま、マーゴット・ロビーの、幼馴染……?あの、誰もが知るハリウッドスターと、幼馴染……?私はザコシと道ですれ違ったことを一ヶ月自慢しまくった人間だ。マーゴット・ロビーと幼馴染であるという状態など、想像するだけでミーハー・メテオ。頭がくらくらしそうだ。彼女のハリウッドでの大躍進を見て、どのような気分なのだろう……



とはいえクリスチャン・ラドフォードだって俳優なのだし、本国での知名度だってあるだろう。そもそも、知名度の差で人を区分するような真似ははっきり言って下品だ。クリスチャン・ラドフォードとマーゴット・ロビーは、同じ故郷の幼馴染。人と人、それ以上でもそれ以下でもないはずなのだ。



このように、自らの軽薄さを目の当たりにしてイヤになる瞬間が多々おとずれる。それでも、やめられない。クリスチャン・ラドフォードは、マーゴット・ロビーのLINEを知っていて、今も連絡を取ったりするのだろうか……などと、意味のない想像を続けることが……。

ライター:城戸